昨日、僕は桜美綾香に告白された。


「……はぁ」
一日、いろいろと考えても答えは出ず、結局次の日になってしまった。
溜め息をつきながら、学校へと続く坂道を自転車で駆け上がる。
僕の通う学校、新徒高校はこの坂の先にある。
厳しい坂ではないが、自転車を飛ばして登ると良い運動になる。
そうするのが、平日の朝の日課だった。

2年1組の教室の扉を開ける。
「……おはよー」
挨拶を返してくるクラスメイトに軽く手を挙げ返す。
そのまま自分の机に座り、顔を隠すように突っ伏した。
「なんだ海野、お疲れか?」
「夜遊びは良くねーぞー」
笑いながら誰かが背中を叩いてくる。
ホームルームまでの貴重な時間は、寝て過ごすのが今日だけ僕の信条なので無視する。
途中、たまたま顔を上げたときに教室に入ってくる桜美の姿が見えた。
なんだか見ていられないので、また机に突っ伏す。


それから昼休みまで、生き地獄の様だった。
なるべく桜美を意識しないようにしてるのだが、ちらちらとこっちをみてくる。
授業中は授業に、休み時間はすぐに教室を出たり友達と騒いだりしてなんとか誤魔化していた。
「はぁ……辛いなぁ」
昼休みはこうしてパックのイチゴ牛乳を飲みながら、屋上から校庭で遊ぶ奴らをぼんやりとみていたりする。

「どうしたんだよ、今日一日変だぞお前」
ふと、隣を見ると親友――と、いうよりは腐れ縁の山代孝也が同じように校庭をみていた。
小学校からずっと同じ学校だったし、家も近いこともあって一応親友ということになっている。
高校も同じところを受けて、1年2年と同じクラスだ。
「うるせー、僕にもいろいろあるんだ」
「分かったぞ、この年になって寝小便したとか――」
とりあえず一発殴って黙らせる。

「お前は僕を心配して来たのか、茶化しに来たのかどっちだ」
「まぁそう怒らず、この頼れるお兄さんに悩みを話してみ」
悩みがあるのはお見通し、か。
話せば少し気が楽になるかもしれない、これでも孝也は口が堅い奴だ。
僕は、自称頼れるお兄さんに昨日の話を聞かせることにした。

「なんだそんなことか、オーケーすればいいじゃねーか」
「そう簡単に決められるか」
そう、これは簡単に決めていいことじゃない。
半端な気持ちで付き合っても、相手を傷つけるだけだ。
「……まぁ、好きなだけ悩むといいさ。
 ただあんまり溜め込むな、愚痴くらいなら聞いてやっから」
「……さんきゅ」
「じゃ、俺教室帰るわ」
最後に「恋は直球勝負!」なんて馬鹿なことをいいながら、孝也は屋上から出て行った
「直球勝負、ねぇ……」


そのまま休み時間終了のチャイムが鳴るまで、僕は屋上でぼんやりと過ごした。




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