「おはよー、海野君っ」
「おはよう、桜美」
自転車の後ろに桜美を乗せて、学校へと走り出す。
今まで一人で登校していたので、誰かと一緒というのは非常に新鮮だ。
それに相手は桜美、文句無しで最高の登校風景。
が、すぐに苦悶の表情になるのであった。

「さ……流石にニケツで……ここは厳しいぞ……」
もちろんこことは、学校へと続くあの坂である。
帰りは楽だが行きは地獄だ。
「歩きでも辛かったから、助かるよー」
「なんだ、そんなに体力……ないのか?」
こくりと頷く桜美。
確かに自転車は辛いかもしれないが、歩きでも辛いのか……
「……まぁ、これから毎日送ってやるから大丈夫だろ?」
「頼りにしてますっ」
そう、これからは僕が支えてあげるんだ。


辛そうに階段をのぼり終えた桜美と教室に入ると、
「よぉ、お二人さん。
 同伴出勤か?」
そこには一番会いたくなかったヤツ――孝也が居た。
「おはよう、今日も相変わらずバカ全開だな」
「お、おはよ……山代君……」
とりあえずすれ違い様に、スネを蹴り飛ばしておいた。
それより桜美を座らせる方が先だ。
「桜美、大丈夫か?」
唸り声を上げる孝也を無視して、桜美を椅子に座らせる。
「えへへ……階段のぼったくらいで、だらしないよね」
「……まぁ、あんまり気にするなよ」
隣の席のヤツの椅子を拝借し、自分も座る。
「ま、真矢……いつからお前は人のスネをいきなり蹴り飛ばす凶悪野郎になったんだ……」
「ああ、すまん。
 全然気づかなかった、悪かったな孝也」
適当に手を振って答える。
殺気を感じるが無視だ、無視。
「二人とも仲が良いんだね」
僕らを見比べて、苦しそうだった桜美はいつの間にか笑っていた。

その後、桜美の幼馴染だという赤坂も交え僕らは他愛のない話をした。
二人には、僕らが付き合ってるというのはとっくに分かってるんだろう。
それは構わないが、どうしていつの間にかクラスの皆にバレているのか。
……大体予想が付くので、元凶らしき人物は殴り飛ばしておいた。
教室に居ては冷やかされてしょうがない、桜美も落ち着かないだろうと思い、昼休みは屋上へ逃げることにした。

「……はぁ、やっと落ち着いた」
「どうしてみんな、私たちが付き合ってるって知ってるんだろう……」
「どうせ孝也が喋りまわったんだろ」
途中、自販で買って来たパックのイチゴ牛乳にストローを突き刺す。
「へぇー……海野君がイチゴ牛乳って、ちょっと意外だな」
「……悪いか、昔から好きなんだよ」
くすくすと笑う桜美もイチゴ牛乳、なんだよ一緒なんじゃないか。
……そういえば、聞かなくちゃいけないことがあるんだった。
「なぁ、桜美」
これを聞いて、知ることは権利であって義務だと思う。
「ん、なに?」

「……お前の病気って、なんなんだ?」

「……」
「無理はしなくていいけどさ……ちゃんと、知っておいてやりたいから」
そう、ちゃんと理解したい。
理解して、桜美を支えてやりたいんだ。
「……うん、私も海野君には知っていて欲しいから」
俯いていた桜美は、ゆっくりと顔を上げて、語ってくれた。
「話すよ、私のコト。
 私の病気、私のカラダ、私の全てを」
自分の背負う十字架を。




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