今日は日曜日です、学校は休み。
私、桜美綾香は真矢とデートに行くことになった。
……と、いっても近くの大きな公園に散歩へ行くだけ。
それでも立派なデート……だと思う。


「んー、良い天気だ」
隣でベンチに座る真矢君が大きく伸びをする。
空を仰ぐと雲が少し浮かぶくらいの晴天。
うん、本当に良い天気。
「初デート、晴れてよかったね」
「……うん、まぁ」
「あ、照れてる」
「照れてないっ!」
相変わらずこういうのが苦手みたい。
照れるとすぐに頬を掻いて誤魔化すんだから……
でも、そんなところも可愛い。

「……そういえばさ」
「ん?」
「よく『真矢』って漢字が読めたな」
不意に、真矢君はそんなことを言い出した。
「そりゃそうだよ、山代君がずっと「マサヤマサヤマサヤ〜」って言ってるからね」
「……それもそうか、結構珍しい名前だから『シンヤ』って読まれたりするんだけどな」
確かに『真矢』と書いて『マサヤ』と読むのは珍しい。
正直に言うと、私も最初は『シンヤ』だと思っていた。
「その名前、誰がつけてくれたの?」
「ああ、うちのじーちゃんだよ。
 『真っ直ぐ飛ぶ矢』と書いて『真矢』なんだってさ」
「へぇー……なんか格好いいね」
「ただクサいだけだって。
 でも――」
ふっと目を細め、前をずっと見据える真矢君。
その横顔に、ドキッとしてしまう。
「――でも、僕はこの名前に誇りを持ってる。
 真っ直ぐどこまでも飛んで行く矢のように生きたい」
そう、それはもう居ないモノを見る様な目。
悲しくて、憂いに満ちてて、何かを問いかける――
「……うん、私も素敵な名前だと思う」
なんとなく、本当に突然真矢君の腕に抱きついた。
真矢君は顔を渋かめたけど、しばらくそうさせて居てくれた。
なんてことはない、日曜日の昼下がり――



「――じゃあ、桜美の名前は由来とかあるのか?」
「……え?」
「ほら、ボクにだけ聞いて不公平だろ。
 あるんだったら教えてよ」
「……」
「いいじゃん、教えてくれたって」
「……の……だよ」
「え?聞こえないぞ?」
「お父さんの、初恋の人と同じ名前……」
「……あー、うん」



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