「ご、ごめんね……海野君、いきなり呼び出して……」
「……いや、構わないよ」

僕――海野真矢は、混乱していた。
今は放課後の学校中庭、周りに人は……居ない。
見られてないか心配になって思わず確認してみる。
……だって、女の子に呼び出されるなんて初めてだし。

「(やべぇ……心臓バクバクいってる……)」

目の前の女の子はクラスメイトの桜美綾香。
いつも大人しくて、勉強も特段できるわけじゃない。
ただ、彼女は心臓病だった。
入学式、担任がホームルームでそう話していたのを覚えている。
詳しいことは話さなかったが、知ろうとも思わない。
結構重い病気……なんだろうが、学校では普通の人とたいして変わらない生活をしている。

「……それで、話って何?」
いつまでも黙ってるから、そう切り出してみる。
いやまぁ、自惚れかもしれないが大体何を言われるかは……
「うん……あのね……急でびっくりすると思うんだけど……」
風が、吹いた。

「私、海野君のことが好きです」

「っ……!」
「……付き合って、くれませんか……?」
硬直する僕、だって告白されたのなんて始めてだ。
確かに桜美は可愛い、実は1年の頃から気にもなってた。
告白されたことに関しては、素直に嬉しい。
けど……

「あぅ……こんなこと言われても困るよね……」
あはは、と苦笑いする桜美
「あの……その……」
しっかりしろよ、僕。
「すぐに答えなんて出せないよね……いつでも、いいから」
待ってるね、最後は微笑みながら彼女はそういった。

その日、僕は答えも出せぬまま帰路に着く。


これが、切なく、甘く、悲しい恋の始まりだった。




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